肩書:表具師
公開日:2015年3月26日
日本古来の伝統技術を、今に
「表具(ひょうぐ)」や「経師(きょうじ)」って言葉を
聞いたこと、ありますか?
簡単に言いますと、
表具とは、裂地(きれじ/布のことね)や和紙に糊を用いて、
掛け軸や屏風、襖などを創り上げること。
元は経本の装丁から始まった技術。
経師とは、「経本の書写を生業(なりわい)とする人」という意味もありますが、
その経本の表具をする職人を指し示す言葉でもあるそう。
つまり、1000年以上も前から続く
クリエイティブを支えるクリエイティブな技術、という訳。
本当の職人
古牧平市さんは、この道50年以上。
東京都のマイスター賞や優秀技術賞など、受賞歴は数知れず。
一度、刷毛や筆を握ると
それまで柔和な顔でお話しいただいていたのに、一転
キリッと、職人の顔に。
「切り替わる」という言葉が頭によぎります。
何よりも目が釘付けになったのは、
その手。
「ペンだこ」ならぬ「刷毛だこ・筆だこ」がボコッと盛り上がって。
無骨ながら「仕事をしてきた手」ということがよくわかります。
仕事部屋の襖の奥には
くるくるっと巻かれた和紙が山のように。
一角には
様々な形や大きさの刷毛がかけられていて。
「職人の仕事部屋」というのは、
その世界を垣間みられるからおもしろい。
つながっていられる「境目」
古牧さんは単に伝統的な表具だけを創るにあらず。
クロスの張り替えや、
洋室やフローリングにも合う襖や屏風の提案もしているそう。
ちなみにこちらは
廃品を活用して、古い木枠を削り直して創られた屏風だとか。
奥様が作られて「押し花」がかわいらしさを演出して。
「屏風って、ひとつの空間を完全に遮るものではないから、
最近また見直されているんですよ」と古牧さん。
プライベートは確保しつつ、つながっていられる安心感。
この独特の感覚、日本の心をもったみなさんならわかりますよね。
展示会やワークショップなんかも精力的に行い、
「表具の魅力」を伝える古牧さん。
《東京表具内装職業訓練校》の指導員も務め、
若者の育成にも力を注いでいるとか。
これから先の世代にも、
この技術、しっかりと伝承されていきますように。