砂町っ子が亀戸で振る舞うハレの飯
公開日:2017年5月11日
(2022年11月価格更新)
※取材時点の営業時間、料金から変更している可能性があります。最新の情報はお店にお問い合わせください。
「鰻なんてモンはよ、3ヶ月に1回くらい喰えばイイんだよ」
焼き場に立ちながら、チャキチャキの下町弁で”鰻論”を語る小泉さんは、3歳から砂町に住み続ける生粋の砂町っ子。
粗っぽくも心地良い口調とは裏腹に、下町男のシゴトは繊細そのもの。
「朝イチで捌いて、その日の分だけ焼いておくんだよ。お客さんがいらしたら、15分間蒸してから焼き上げるんだ。だから20分くらいはかかるかな」
20分と聞いて長く感じるのはファストフードに親しんだ現代病か。このスタイルはもっとも鰻を美味しく提供するために小泉さんが編み出した方法だという。
鰻が焼き上がるまで、もう少し小泉さんのお話に耳を傾けてみるとしますか。
遠方からもファンが訪れるワケ
[ワケ その1] キリッとしたタレ
「ウチのご贔屓さんはタレが旨いって言ってくれるね。もちろん注ぎ足しだよ。創業40年を迎えるんだけどさ、元々は砂町でやってたわけ。ご縁あって、亀戸に移って来てからは17年くらいになるかな」
地元・亀戸の方のみならず、小泉さんの鰻を求めて関東近郊から訪れる人も多いとか。亀戸駅北口から亀戸天神社をはじめ、神社仏閣が密集する亀戸3丁目への道中に店を構えているため、祭事やお参りの行き帰りに来店する人が多い。
そうしてフラッと訪れた人がまずハマってしまうのが、甘さ控えめなタレ。言い方を変えればくどさのない味は、粋な小泉さんの人柄そのものです。
[ワケ その2] 抜群の鮮度
焼き場近くのカウンターには金串に刺さった鰻が。
「ウチはさ、毎朝捌いてるんだよ。捌いたら、こうして金串に刺してさ。白焼を食べれば一発でわかるよ、鮮度がまったく違うって。鰻は国産で、産地は限定せずにその時期に状態が良いものを仕入れているんだよ」
[ワケ その3] ホクっとした食感
鰻の食感として「ふっくら」という言葉が良く使われますが、小泉さんの鰻は「ホクホク」という表現が最適かもしれません。ここにもこだわりが……
「鰻に自信があるから蒸し過ぎないし、焼き過ぎないの。いい鰻は蒸せば蒸すほど、焼けば焼くほど、脂と一緒に旨味もなくなっちゃうからね。だから『小泉さんの鰻は分厚くて旨い』って言われるんだよね」
お待ちかね! ”絶品うな重”が完成
ご店主の小気味いい話に聞き惚れていたら、出来ましたっ! 出来ましたっ!
うな重「松」のご登場!
うな重「松 」4,400円(税込)
うーん、芳しい良い香り! そしてこの光沢! もうたまりません!
お箸を取って、いざ!
おぉ! 箸を入れただけでも身の厚さは一目瞭然。
卓上の山椒を振りかけて、アッツいうちに、口へ……
うまぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜あぁ
なんで鰻ってこんな幸せな気分になれるんでしょうねぇ。
そしてタレが美味しい。なるほど、甘さを抑えたタレは脂がのった鰻と合いますなぁ〜。
そして、お米もナイス!
うな重のお米は固めが良いなんていいますが、小泉さんの炊き加減は固めではありますが、過度ではなく、蒲焼の食感と好相性!
もう最高っ!
なるほど、遠方にもファンを抱えるワケですな。
もう、みなさんも小泉さんの鰻を食べたくてウズウズしていると思いますが、ダメ押しの魅力をいくつかご紹介!
うな重の箸休めにと添えられる「ぬか漬け」も自家製。季節の野菜を使っていて、カブやセロリ、谷中ショウガが入る時もあるそう。
ご主人自慢の一品「白焼」は、「大」3,740円(税込)。タレを使わないだけに誤魔化しが利かないこちらは、鰻のクオリティと小泉さんのシゴトを堪能するには打ってつけ。
忘れてはならないのが「肝焼 」。なんと鰻4匹から1串分しか取れない贅沢なこの品は、1日に5、6本の限定商品! もし幸運にも出会えたなら、鰻が焼き上がるまでに、日本酒と一緒に楽しむのがオススメです。
そして、こちらのお店の最大の魅力は、なんと言っても気さくで仲睦まじいご夫婦。
「海外産の鰻が出回って、ひと時は鰻屋が結構廃業したんだよ。でもここ最近、ウチみたいな専門店に行けば旨い鰻が喰えるってみんな気付き始めてるね。鰻は日常食じゃないからさ。お祝いの時とかに、美味しい鰻を食べにきてよ」(ご主人)
二人三脚で切り盛りしてきた「うなぎ小泉」は、お二人が生み出す和やかな雰囲気のなか、極上な鰻を堪能できるお店なのでありました。
お店は亀戸二丁目団地近く。亀戸天神社や香取神社へお出かけの際に、ぜひ!