豆と向き合う
公開日:2015年3月23日
早朝の闘い
豆腐屋の朝は早い。
そんなことは重々承知だが、
いざ、その現場に赴くとなるとやっぱり「早いなぁ」って身に染みる。
午前3時半すぎ。
白い湯気がモクモクと店舗の外まで出ていて・・・
店内を覗くと
すでに桧山勝征さん・勝利さん父子が作業をはじめている。
豆を摺り、
息子の勝利さんが、高温のボイラーで炊いて
絞り出されたやわらかな色の豆乳。
その豆乳に凝固剤を入れて
父の勝征さんが一心に、手早く、力いっぱいかき混ぜて。
固まってきたら
(あっ、これ、おぼろ豆腐に見える)
長い桶に詰めて・・・
重しを置いてしばらく。
徐々に、徐々に水分が押し出されて。
黙々と、黙々と・・・
一つひとつの動きが体に染み付いているかのように
どの動きにも一切の無駄がなくて。
そして
ひとつ豆と向き合う作業が終わると、
手早く使用した器具を洗って。
常に美しく、清潔に。
そうしてでき上がる、このやわらかな色の塊。
等間隔で切り分けて。
真摯に豆と向き合う父子の姿。
スーパーで買う豆腐とは違う。
ひとつの「作品」とでも呼びたい
そんな美しい豆腐ができ上がる。
闘いは同時進行
お豆腐の他にも作るものはいっぱい。
ほら、
豆乳だって、カップに入れられて。
絞りたての豆乳って、温かくて、
この瞬間にしか味わえない
独特の濃い甘みがありますよね。
固まってきたお豆腐を
小分けにパックに詰めて
これが「寄せ豆腐」になるそう。
そうかと思えば
今度はしっかりと弾力のある豆腐を
薄く切り分けて
スダレの上に丁寧に並べて・・・
勝征さん、どこからかまた
重しを持ってきて、スダレの上に均等に配置。
しっかりと
しっかりと、しっかりと水抜き。
「これは油揚げになるんだよ」と勝征さん。
なるほど!だからちょっとお豆腐がかわいそうなくらい
重しを乗せて、しっかり水を抜かないといけないんですね!
桶を持って買いに行きたい
私の母は、お豆腐をスーパーで買っておりましたが
なんだか、こんなお豆腐屋さんに出会ってしまうと
桶とかボウルを持って
「お豆腐1丁と油揚げ2枚ください!」
なんて言ってみたくなるってもの。
この地で45年以上。
桧山さん父子の実直な仕事で手造りされる豆腐。
毎日食べたい、豆の味がぎっしり濃い豆腐。
そんなことを思っていたら、
あれ、もうすっかり夜が明けていた。
おはようございます。
なんだか朝ご飯においしい「豆腐のお味噌汁」が飲みたい。