言うなれば、”酒が呑める亀戸2丁目公園"
公開日:2017年6月2日
大人の遊び場にルールはいらない
酒場ブームと言われて久しい。
チェーン系居酒屋にはない、”良い意味で場末”な雰囲気のなか、
酒を愉しめる空間と時間が再評価されているのだ。
しかし、老舗酒場と称される店のなかには、
しきたりや暗黙のお約束ごとがあり、
“客ファースト”とは言い難いのも事実。
ま、そんな不問律が楽しいのもブームの背景だったりするのだが……
こうした酒場カルチャーに一石を投じる店が現れた。
亀戸2丁目、路地裏に佇む「酒呑処遊び亭」。
「遊びにきてほしい」
映像業界から脱サラして「酒呑処遊び亭」を開いたのは店主の小矢さん(通称:おやぢ)。
自らも酒好きで、サラリーマン時代には数多の店を飲み歩いていた店主が、”理想の酒場”をカタチにしたのだ。
オープンは2016年12月とまだ日は浅い。
にも関わらず、すでに常連さんがついているのは、声高には叫ばないこの店のコンセプトの賜物だろう。
「当初、『遊び場』って店名にしようと思っていたんです。名前のまんまですけど、大人がお酒とツマミを愉しみながら遊べる場所にしたかったんです。まぁ、”大人の公園”ですかね。公園だから、主人公は遊びにきたお客さん。店のルールでがんじがらめにはしたくなかったんです」
小矢さんの言葉通り、店内には仰々しいお題目や店都合の禁止ルールの貼り紙はなく(唯一の触れ書きは店内禁煙。店外で喫煙可)、客たちは各々のリズムとスタイルで時間を過ごしている。
常連のお目当ては”サービス品”
そんな「酒呑処遊び亭」の魅力のひとつが日替わりのサービスメニュー。
つまみと酒、それぞれ1品ずつの超特価品が用意されている。
この日のサービス品はハイボール(250円)と真鯛刺身(350円)。
お通しも席料もないこの店では、サービス品をセットで頼んでも、600円で済むという具合だ。これは呑んべえには嬉しい限り。
”遊具”は酒とつまみだから
店内で一際存在感を放つのが、大型の黒板だ。
前述のサービス品を含め、つまみや日本酒、焼酎のラインナップが記されている。席にもメニューは用意されているが、ついつい黒板を見つめる客も多い。
店主と料理長の連携プレーで切り盛り
「酒呑処遊び亭」を語るうえで、料理を担当する田村さん(通称:ぱぱあ)を紹介しないわけにはいかない。
和食で基礎を学んだ料理長のアイデアと腕が、酒がススむつまみを生み出しているからだ。
店のコンセプトを体現しているかのようなメニューが、この「究極の赤ウインナー」(450円)といえる。よく見かけるウインナーと比べると、1まわりも2まわりも大きなウインナーを程よく焼き上げたこの一品は、皮がパリッと、なかは素朴な昔ながらの味が特徴。マスタードをつけて口にすれば、それはもう、酒がススむわけです。
もう一点、紹介しておくならば、こららを。北海道出身の店主ならではのラム肉を使った「ラム肉豆腐」(480円)。巷では”臭みのないジビエ”なんてものがもてはやされているようだが、ジビエの醍醐味はその特有の風味。「酒呑処遊び亭」のラムはそのあたりを踏まえた力強さを感じる。そして、味付けは、いわずもがな、和食出身の料理長の腕前が発揮されたいい塩梅だ。
お手洗いにもご注目!
そうそう、トイレについても触れておかねばなりませんな。
「酒呑処遊び亭」のトイレは全面が黒板となっており、チョークが用意されている。用をたすついでに、客たちに”落書き”をしてもらう仕掛けだ。
その落書きが実に愛に溢れている。
来店の足跡を残す者、お気に入りメニューを褒める者、店へのリクエストを記す者……。
この落書きを見れば、いかに客たちが自由に過ごし、この店を愛し、贔屓にしているかが、はっきりとわかる。
肩肘張らず、遊びにいけばいい
そう、亀戸に加わった酒場「酒呑処遊び亭」は、
大人のための遊び場なのだ。
大枚を握りしめて飛び込む必要もなければ、店の空気を読む必要もない。
思い思いに、酒とつまみと、店で交わされるたわいもない会話を楽しめばいいのだ。
そう、それでいい。
そんな店があってもいいのだ。