“私の台所”で、今日もちょっと元気に
公開日:2026年6月8日
※取材時点の料金、営業時間など変更している可能性があります。最新の情報はお店にお問い合わせください。
木場駅から歩いて数分。永代通りの賑わいを抜け、少し住宅街へ入ると、まちの空気がふっと穏やかになります。
そんな通り沿いに、静かに佇むお店があります。
その名も、Ka’u_kitchen。
マンション1階の小さなお店。大きな看板が出ているわけではありません。
けれど、その控えめな佇まいが、このまちには不思議とよく馴染んでいました。
駅からお店へ向かう道中にも、個人で営まれる小さなお店がぽつぽつと並び、どこか肩の力が抜けるような空気。
「運動」と「食事」から健康を支える
「Ka’u(カウ)」とは、ハワイ語で“私の”という意味。Ka’u_kitchenは、“私の台所”という意味なのだそうです。
そう教えてくださったのは、店主の藤木さん。以前は大手飲食チェーンに24年間勤務し、全国各地の店舗運営に携わってきました。各地を回りながら、飲食の現場に向き合ってきたといいます。
そんな経験を経て、木場でスタートしたKa’u_kitchenです。
実は隣には、奥様が運営するピラティススタジオがあります。
もともとは別の場所でスタジオを運営していましたが、現在のテナントへ移転したことをきっかけに、隣で“食”を通した健康づくりもできる場所として、Ka’u_kitchenを始めたそうです。
「運動に加えて、食を通して内側からの健康も届けられたらと思ったんです」と藤木さん。
料理だけではなく、“日々を整える場所”として。そんな想いが、少しずつ形になっていきました。
また、働き方や暮らしについて見つめ直すタイミングも重なり、この木場で新たな一歩を踏み出したといいます。
だからこそ、Ka’u_kitchenの料理は、“特別なごちそう”というより、“毎日の身体に寄り添うごはん”。
やさしい味わいの中にも、このお店らしい気遣いが込められていました。


▲店主の藤木さん。取材中も、料理への想いを穏やかに語ってくださいました。
“定食全体”で整うごはん
Ka’u_kitchenのランチは、週替わり。主菜に加え、副菜、ごはん、スープまで含めて、一つの定食として丁寧に組み立てられています。
中でも驚いたのが、副菜へのこだわりです。
「どちらかというと、副菜の方に手間をかけているかもしれません」そう話す藤木さん。
人参サラダやひじきの煮物など、身近な料理でも一つひとつ丁寧に手作りすることで、“いつものお惣菜”が、どこか“心がほどける味”に変わっていきます。
「日常にある食材を、工夫しながら美味しく食べてもらいたいんです」そんな藤木さんの想いが伝わってきます。
Ka’u_kitchenが大切にしているのは、ハレの日のごちそうではなく、毎日の身体をいたわるような存在であること。
だからこそ、定食全体のバランスにも気を配っているそうです。
その想いは、料理の説明や食材の一言が添えられたメニューにも表れています。
「今日はちょっと健康に近づいたかな」
そんな気持ちになれるのも、このお店の魅力と言えるでしょう。
週替わりだからこそ、「今週は何かな?」と楽しみに訪れる常連さんも多いのだとか。
毎週少しずつ変わる定食には、また足を運びたくなる楽しさがあります。
そして、その料理を作る藤木さんのやわらかな人柄も、Ka’u_kitchenに自然と人が集まる理由なのだと感じました。

▲今週のランチ。今回はGWランチ(提供期間は終了)

▲メニュー表。藤木さんのこだわりが説明書きに詰まっています

▲「和風ピビンパ」きんぴらごぼう、春菊の胡麻和えなどをのせた「和テイスト」のピビンパ

▲「鶏むね肉塩南蛮漬け」グレープフルーツのほろ苦さが加わった、新感覚の南蛮漬けに箸が止まりません

▲「三つ葉とピーマンエスニック風サラダ」アーモンドの食感がアクセントになり、最後まで楽しく味わえる一品です

▲「じゃが芋と白滝の煮付け」どこか懐かしく、やさしい味わいにほっと心がほどけます

▲「春キャベツとあさり・ベーコンのスープ」あさりの旨味がやさしく広がる一杯です
“ゆっくり食べる”時間が流れる場所
Ka’u_kitchenは、決して広いお店ではありません。ですが、その空間のサイズ感が、このお店にはちょうどよく感じられました。
近隣に住む方や近くで働く会社員の方のほか、東陽町から歩いて訪れる常連さんもいるそうです。
「12時に着くので作っておいてください」と電話を入れてから来店するお客様もいるそう。
忙しいランチタイムの中でも、なるべく温かい料理を、できるだけスムーズに届けたい。そんな藤木さんの気遣いが伝わってきます。
店内の壁には、やさしいミントカラー。真っ白な内装ではなく、一部だけ色を変えることで、どこか落ち着く空間になっていました。
気取らないのに、丁寧。そんな空気感が、Ka’u_kitchenらしさだと感じました。

▲カウンター席は、やさしい色合いの壁紙に包まれながら、ゆったりとしたランチ時間を過ごせます

▲調理場向かいのカウンター席は、藤木さんが一品一品丁寧に仕上げていく様子を、間近で見ることができます

▲2名用テーブル

▲4名用の個室
木場のまちだからこそ
取材中、印象的だったのが、“木場という地域”についてのお話でした。
「東陽町みたいに、人が一気に来る場所だったら、たぶん対応できなかったと思うんです」と語る藤木さん。料理も、接客も、仕込みも、現在は一人でこなしています。
営業後には買い出しへ行き、そこから翌日の仕込み。朝早くから準備を始めることもあるそうです。
だからこそ、この木場の穏やかな空気感が、お店には合っていました。
近隣には個人店も多く、商店街を通じて少しずつ横のつながりもできてきたとのこと。
「この場所でお店を出せて良かったです」その言葉からは、この地域への愛着が感じられました。

▲ランチをいただきながら取材。料理のことを楽しそうに、丁寧に教えてくださいました
“また来よう”と思える場所
現在はランチ営業が中心ですが、今後は夜営業も視野に入れているそうです。
ただ、一人体制での営業は簡単ではありません。
「夜もやりたい気持ちはあるんですけどね(笑)」
そう話しながらも、藤木さんの表情はどこか前向きでした。
Ka’u_kitchenには、“また来たくなる理由”があります。
身体にやさしい料理。
ほっとする味。
そして、ゆっくり流れる時間。
ここは、“特別な日に行くお店”というより、“日常を少し整えてくれる場所”なのかもしれません。
木場の住宅街で、今日も静かに営業する“私の台所”。「今週のランチは何だろう」そんな小さな楽しみが、日常の中に増えていく。
Ka’u_kitchenは、そんな場所なのかもしれません。

▲藤木さんとパシャリと一枚。素敵な時間をありがとうございました
<取材後記>
―「ビビンバ」が、実は“ピビンパ”という呼び方に近い―
みなさんはご存じでしたか?
私は今回の取材で初めて知り、取材後もしばらく「ピビンパ、ピビンパ…」と口ずさんでしまいました。
料理について質問すると、藤木さんは一つひとつ丁寧に教えてくださいます。
何気ない質問にも楽しそうに言葉を返してくださる姿が印象的で、取材をしているこちらまで嬉しくなるような時間でした。
Ka’u_kitchenのやさしい空気は、きっと藤木さんの人柄そのものなのだと思います。

▲和風ピビンパ
「ピビンパ、ピビンパ…」とつぶやきながら、思わず夢中でかき混ぜてしまいました
※2026年5月取材時の情報です。料金や営業時間などが変更になる場合がございます。詳細は必ず店舗にてご確認ください。
※記事中の金額は全て税込みの価格です。