木場で見つけた、3人が作る中華のかたち
公開日:2026年6月18日
※取材時点から料金、営業時間など変更されている可能性があります。最新の情報はお店にお問い合わせください。
木場駅から少し歩いた永代通り沿い。大きなガラス窓が印象的なビルの2階に
「Chinese Restaurant 晴華(せいか)」はあります。
店内に入ると、大きなガラス窓からやわらかな光が差し込む落ち着いた空間が広がります。
そして、思わず目を引くのがカウンター席。
目の前で料理が仕上がっていく様子を眺めながら、一皿ずつ味わう。
そんな時間を楽しめることも、Chinese Restaurant 晴華ならではの魅力です。
中華料理店というと円卓やテーブル席を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、Chinese Restaurant 晴華は少し違います。
“目の前で料理が仕上がり、料理人との会話が生まれる空間”
Chinese Restaurant 晴華の魅力を語るうえで欠かせないのが、この店を支える3人の存在です。
シェフの大胡晴雄さん、奥様の恵利香さん、そしてパティシエの海老根さん。
取材を通して見えてきたのは、「そこまでやるの?」と思わず驚くほどのこだわりでした。

追い求めた理想の形
シェフの大胡さんが独立を決めた理由は、少し意外なものでした。
「料理を作るだけじゃなく、お客様と直接話したかったんです」
以前働いていたお店がカウンタースタイルで、出来たての料理をそのまま提供できる環境だったといいます。
「冷たいものは冷たいまま、温かいものは温かいまま、その状態で出せるのがカウンターの一番の魅力なんです」
ただ、もともと人と話すことが得意だったわけではなかったそうです。
それでも料理を提供する中で、「このお客様はどんな話をすれば楽しんでもらえるのか」を少しずつ考えるようになっていきます。
料理を出すことそのものに加えて、会話も含めてその時間をどう楽しんでもらうか。
その意識の中で、料理だけではなく“自分自身”を含めて店のファンになってもらおうと。
そうすることで、お店としての魅力も広がり、また来たいと思ってもらえるきっかけにもつながっていきました。
そしてその積み重ねこそが、
「料理だけではない関係性をつくること」=“追い求めていた理想の形”です。
「“美味しかった”と言ってもらえたり、料理の感想をその場で聞けたりするのが嬉しくて」
その“人との距離感”をもっと大切にしたい。
そんな想いから、自分のお店を持つことを決めました。

▲左:シェフの大胡晴雄さん、右:奥様の恵利香さん
木場で、中華料理店を開く
数多くの物件を見た中で出会ったのが、今の木場の店舗でした。
高い天井と大きな窓ガラス。
初めてこの物件を見たとき、「ここでお店をやりたい」と感じたそうです。
一方で、木場という街ならではの難しさもありました。
近隣にはファミリー層が多く、“カウンター主体の中華料理店”はまだ馴染みが薄い環境でした。
「最初は“テーブル席がいい”という方がほとんどでした」
そこで大胡さんは、お客様との会話を大切にしました。
料理のこと、食べ方のこと、時には何気ない世間話まで。
少しずつ距離を縮めながら、「次はカウンターで食べてみようかな」と思ってもらえる関係を築いていったそうです。

▲10席のカウンター席。目の前で調理の様子を見ることができ、会話も楽しめる空間

▲6席のテーブル席。お子様連れでもゆっくりと食事ができる席
“よだれ鶏”に、ここまで本気になる
Chinese Restaurant 晴華の看板メニューが「よだれ鶏」。
運ばれてきた瞬間、きっと多くの人が“知っているよだれ鶏と違う”と感じるはずです。
まず目を引くのが、たっぷりとかけられた特製ダレ。
醤油をベースに、昆布・鰹節・干し椎茸などを加え、1か月半以上熟成させたもの。
そこに黒酢や2種類のラー油を合わせています。
一皿のために、驚くほど多くの手間がかけられていました。
「最後に“美味しかった”って思ってもらえれば、それでいいんです」
また、このよだれ鶏から生まれた楽しみ方もあります。
「タレが美味しくて、余るのがもったいない」、「最後までタレを飲みたくなる」
――そんな声がきっかけでした。
そこで考案されたのが、餃子を“タレにつけて食べる”スタイル。
人気のタレを最後まで楽しんでもらいたいという発想から生まれた一皿です。
餃子は皮からすべて手作り。
生地を練り、寝かせては練る、この工程を3回繰り返し、完成まで約4時間かかるそう。
印象的だったのは“手間”に対する感覚でした。
「そんなに時間をかけるんですね」と驚くと、大胡さんは少し不思議そうな表情で、
「そうですか? 手間だと思ったことはないですね。お客様が喜んでくれるなら」
と、さらり。
料理を作ることの先にあるのは、食べてもらうことではなく“喜んでもらうこと”。
その言葉と一皿に、職人としての姿勢がそのまま表れているようでした。

▲よだれ鶏に使用する高坂鶏のムネ肉とモモ肉

▲鶏肉の上にカシューナッツをかけていく様子

▲特製ダレに2種のラー油を合わせて仕上げていく

▲仕上げにパクチーを添えて完成 ※パクチーが苦手な方はネギに変更可能

▲完成したよだれ鶏。特製ダレがたっぷりとかかる一皿

▲よだれ鶏の特製ダレを活かした餃子の楽しみ方

▲豚肉には“くるみとん”を使用。よだれ鶏の特製ダレにつけて味わう餃子
中華料理店なのにパティシエ?―3人だからできること―
Chinese Restaurant 晴華の魅力は、“中華料理店”という言葉だけでは語りきれません。
というのも、恵利香さんはもともと和食料理店で働いていた経験があり、その中で培われた考え方が料理にも自然と取り入れられています。
例えば、出汁の使い方。
中華をベースにしながらも、どこかに和食の考え方が感じられる料理が並びます。
また、Chinese Restaurant 晴華の大きな特徴のひとつがパティシエの存在です。
コースの最後にはパティシエの海老根さんが作るデザートが登場し、さらに焼き菓子を持ち帰りとして渡すことも。
“料理の最後まで、一つのコースとして楽しんでもらう”
その考えが、料理からデザートまで一貫しています。
取材中、「お店の推し」を伺っているときに、大胡さんが
「自慢のパティシエが作るデザートについてお話しするのを忘れていました!」
と笑う場面がありました。
しかし実際には、Chinese Restaurant 晴華を語るうえで欠かせない存在です。
中華を楽しみながら、季節を感じ、最後には洋菓子で余韻を締めくくる。
Chinese Restaurant 晴華は、そんな少し贅沢な時間を過ごせるお店です。
選んでもらえたなら応えたい
驚くのが、コース内容は約1か月半ごとに変わること。
その時期ならではの旬の食材を使い、料理の内容を組み立て直しているそうです。
食べる側としては、「次はどんな料理が出てくるんだろう」と楽しみになります。
ただ、今のコースを提供しながら、次のコースを考える。
仕入れ先を調整し、食材の状態を見極め、新しい料理を組み立てていく。
その労力は想像以上です。
レシピを考えるだけでも簡単ではないはずなのに、それを絶えず続けていく。
取材を通して感じたのは、「すごい」という言葉だけでは足りないほどの“料理への誠実さ”でした。
「東京には本当にたくさんのお店があります。その中でうちを選んでいただいたので、その期待にはできる限り応えたい。それで喜んでまた来てもらえたら、これほど嬉しいことはないですね」
継続して選ばれ続けるお店であり続けるために。
派手さではなく、日々の積み重ねを大切にしながら店を育てていく姿勢が印象的でした。

▲料理を手に取りながら、取材時とはまた違う真剣な表情で説明する様子
中華だけじゃない。“お酒も、お茶も、自分たちの手で”
料理だけではありません。
Chinese Restaurant 晴華ではドリンクにもひと手間加えられています。
レモンサワーには白酒(中国のお酒)とスピリタスとレモンの皮を自家製で漬け込んだベースを使用し、山椒サワーには季節の柑橘を使っています。
中国茶も恵利香さんが独自にブレンドしています。
「ここでしか飲めないものを出したい」
メニューには書ききれないほどの工夫が詰まっていますが、実はあまり積極的にはアピールしていないそう。
だからこそ、知るほどに驚きが増し、ひとつひとつのドリンクを試してみたくなります。

▲甕出し紹興酒と手書きのドリンクメニュー

▲ドリンクメニュー表。さまざまな中国酒やドリンクが並ぶ

▲中国茶やソフトドリンク、ノンアルコールドリンクも充実
木場で中華料理を続けていくということ
取材の最後、大胡さんは少し照れたように、こんな言葉を話してくれました。
「最初は“ちょっと怖そう”って思われることもあるんですけど、話してみたら違うって分かると思います(笑)」
カウンター越しに料理を作る姿は、確かに職人らしい緊張感があります。
でも実際に話してみると、とてもやわらかく、お客様との時間を大切にしている人でした。
「ぜひ、気軽に食べに来てもらえたら嬉しいです」
中華だけど、中華だけじゃない。
料理だけではなく、人との会話や季節、その時間そのものを楽しめる場所。
そして何より、料理人の大胡さん、恵利香さん、パティシエの海老根さんがいること。
新しいことを始める時には、必ず3人で話し合う。
取材中も、誰かが話せば誰かが補足し、時には笑いが起こる。そのやり取りからは、仲の良さと信頼関係が自然と伝わってきました。
3人で考え、3人でつくり上げる。
だからこそChinese Restaurant 晴華には、料理のおいしさだけではない、どこか温かな居心地の良さがあるのかもしれません。
特別な日でも、そうでない日でも。
木場でそんな一軒を探しているなら、ぜひ一度、カウンターに座ってみてください。
Chinese Restaurant 晴華で、心も体も温まる時間を過ごしてみませんか。
<取材後記>

▲ピーカンナッツの飴炊き

▲麻辣ナッツ
取材を終えたあと、「これは家族にも食べさせたいな」と、自然に思ったのが、“ピーカンナッツの飴炊き”と“麻辣ナッツ”でした。
コース料理の途中に登場する一品ですが、正直“箸休め”という言葉では片づけられないほど美味しい。
香ばしさと甘さが広がる“ピーカンナッツの飴炊き”と、
ほどよい辛さと旨味がクセになる“麻辣ナッツ”。
気づけば手が止まらなくなっていました。
実際、お土産として購入されるお客様も多いそうです。
料理だけではなく、“持ち帰ったあとまで嬉しい”。
そんなところにも、Chinese Restaurant 晴華の魅力が詰まっているように感じました。
本当は、あまり人に勧めたくない。
自分だけの“お気に入り”にしておきたい。
でも、気づけば誰かに話したくなってしまう。
Chinese Restaurant 晴華は、そんな不思議な魅力を持ったお店でした。

▲最後は3人で写真撮影
※2026年5月取材時の情報です。料金や営業時間などが変更になる場合がございます。詳細は必ず店舗にてご確認ください。
※記事中の金額は全て税込みの価格です。