ソムリエが打つ「へぎそば」
公開日:2015年2月24日
あんなにキライだった故郷だけど・・・
新潟県小千谷市—。
江戸初期から受け継がれる和布「小千谷ちぢみ」が有名なその土地は、
青年にとって、「山の中の田舎」でしかなかった。
20歳になると青年は、故郷を飛び出し、東京のスイス料理店で働き始める。
今までとまったく違う世界。
青年は、レストランの仕事に没頭する中
スキルアップのため、24歳でソムリエスクールへ入学。
ソムリエ1期生として、葡萄のバッジを手に、
フレンチ・ロシア料理とレストランの経験を積んでいくなか、
32歳の頃、転機を迎えた。
「小千谷っていいなぁ」
————
「友膳」の店主・友野和義さんは、
父となり、子どもを連れて久しぶりに訪れた小千谷で、
故郷の魅力に改めて触れ、「故郷の味・へぎそば」に興味を持ったそう。
「35歳ぐらいかな、『そばがいいな』『和食が落ち着くな』と
思うようになってね。なんていうか、情緒的に安定するっていうか」
そして2004年、レストランでなく、
へぎそばを提供する「友膳」をオープン。
せっかく身につけたソムリエのスキル、
「ソムリエが打つへぎそば」とキャッチフレーズをつけて。
「手打ちのへぎそば、ってほとんどないんですよ」
へぎそばに目覚めた友野さん。
必死でそばの打ち方を学び、体得した今日。
実は、現在、ご当地の小千谷で食べられるへぎそばは
そのほとんどが機械打ちだそう。
へぎそばとは、小千谷ちぢみにも使われる「布海苔」を
そば粉と少しの小麦粉とともに混ぜ込み練り上げるそば。
納得のいく「やわらかな緑色」を出すまでに2〜3年かかったとか。
切る前に生地の幅を決めて・・・
「そばを手打ちできるようになって、
ひとつ上のステージに立った感覚」とも。
機械ではなく手打ち。
どこか喉ごしも柔らかでまた食べたくなるそばのでき上がり。
そば×ワイン 新しいおいしさの提案
なんとなく、日本酒を連想しがちな「そば」だが、
実はワインとも相性抜群!
「『もり汁』って、そばのつけダレだけど、
醤油がベースになっているから、赤ワインと合うんだよ。
だから、『こんなおいしさもある』って知ってもらいたい。
より『おいしさの世界を広げる』ような感じかな 」と友野さん。
スキルを生かしたワイン講座はもちろん、
「赤の白割り」や「白のロゼ風」なんていう
オリジナルワインもラインナップ。
「チーズフォンデュ」は
友野さんが今まで勤めて来た店舗で学んできた味。
チーズフォンデュとワイン、〆にへぎそば、というコースが
とても人気だとか。
信じた道をひた走る。
そして行き着いた「提案したいおいしさ」。
頭デッカチなステレオタイプに考えず、試してみたい「おいしさ」をぜひ。