亀戸の夜に、もうひとつの「帰れる場所」を。
公開日:2026年1月15日
※取材時点の料金、営業時間など変更している可能性があります。最新の情報はお店にお問い合わせください。
亀戸六丁目。大通りから少し奥へ入った場所に、静かに明かりを灯すバルがあります。2024年9月中旬にオープンした「亀戸BULL’Sバル」は、西大島の「ステーキハウス ブル」のDNAを受け継ぐ、イタリアン×コンチネンタルバルです。
オープンからまだ3か月ほど。それでも、近隣に暮らす人々を中心に少しずつ顔なじみが増え、店内には穏やかな日常の空気が流れはじめています。初めて訪れたはずなのに、自然と肩の力が抜け、思わず「ただいま」と口にしたくなる。そんな温度感が、この店にはあります。
「作りたいけれど、出せなかった料理」
この店の始まりは、とても素直な思いでした。 店主の水田さんは、これまで系列店であるステーキハウス ブルに長く携わり、料理とサービスの現場に立ち続けてきました。
ステーキハウスとして完成度を高めていく中で、どうしても業態上、提供できない料理が出てきたといいます。作りたい料理はあるものの、ステーキハウスでは表現しきれない。イタリアンバルやコンチネンタルバルという形であれば、もっと自由に料理を届けられるのではないか。ワインとともに、気軽に楽しめる一皿を出したい。そんな思いが重なり、「それなら、新しい店を作ろう」と考えたことが、この店の出発点でした。

▲ 店主の水田さん。料理の一皿一皿と同じように、気取らず、まっすぐな姿勢でこの店を切り盛りしています

▲パルミジャーノたっぷりシーザーサラダ 。白ワインが欲しくなる、チーズの余韻。静かに始めたい夜に、ちょうどいい一皿です

▲カルボナーラ 。濃厚なのに、重すぎない。一度食べたらやみつきになる味わいです

▲生クリームを使わず、チーズを贅沢に使った濃厚なカルボナーラ。白ワインを加えることで奥行きのあるコクが生まれ、ひと口ごとに自然とグラスが進みます
半年以上かかった物件探しで実感した、地元の力
店づくりは、決して順調ではなかったそう。「BULL」というブランドを大切にしたいという思いから、エリア選びにも強いこだわりがありました。
物件探しは難航し、動き出してから半年近く決まらない時期が続きました。飲食不可を理由に断られることも少なくありません。そんな中、最後に道を開いたのは、人とのつながりでした。
知人を通じて紹介されたのが、現在の物件です。インターネットでは見つからなかった場所でしたが、「地元のコミュニティの力は本当にすごいと感じました」と水田さんは振り返ります。

▲はじめてでも、不思議と落ち着く空間。団体でも、ひとりでも、心地よく過ごせます
亀戸は、ずっと身近で少し都会な街
店主の水田さんは砂町の出身です。幼い頃から、亀戸は少し背伸びをした“都会”のような存在だったと言います。総武線が走り、人の流れがあり、店も多い。その一方で、下町らしい人情は今も変わりません。再開発により新しいマンションが建ち、若い世代が増える一方で、昔から住み続けている人たちの姿も残っています。「新しい人と、昔から住んでいる人が自然に交差している。それが亀戸らしさだと思います」その感覚は、店を訪れる客層にも表れています。

▲もともとはスナックだったという店内。その面影は今でもほんのり感じれます
時間帯によって変わる、店の表情
営業時間は18時から深夜1時まで。時間帯によって、店の表情は大きく変わります。仕事帰りにグラスワインを一杯楽しむ方、仲間や家族としっかり食事をする方。そして深夜にパスタやピザだけを目当てに立ち寄る若い世代。50代・60代から20代まで、年齢層は非常に幅広いのが特徴です。「普段使いで来てもらえるお店でありたいです」その言葉通り、特別な日でなくても足を運びやすい空気があります。
系列店のDNAを受け継ぎ、肉料理は亀戸BULL’Sバルの大きな魅力です。赤ワインと相性の良い一皿が揃っています。

▲ 鶏もも肉コンフィハニーマスタードソース。 口に運ぶ前からわかる、ほろほろ食感。丁寧に火を入れた鶏肉の旨みが、口の中で広がります


▲サーロインステーキ(150g)。肉の旨みをまっすぐに楽しめる一皿。系列店のDNAを感じさせる、シンプルで力強い焼き上がりです

▲タレは、系列店・ステーキハウス ブルで長く親しまれてきたもの。中はほどよくレアに仕上げ、やわらかな肉質と旨みをそのまま引き立てます
一方で、キッシュやチリコンカンのチーズ焼き、ガーリックトースト、シーフードマリネなど、前菜や軽めの料理もすべて手作りです。仕込みは基本的に一人で行いながらも、バリエーションは妥協しません。

▲シーフードマリネ 。最初の一口にちょうどいい前菜。軽やかな酸味と食感が、会話のスイッチになります
黒板メニューには、その時々の挑戦が並びます。評判が良ければ定番メニューに加え、反応が良くなければ潔くやめる。「大変ですが、それも含めて楽しいです」と語る三田さん。常にお客様の喜ぶ姿を思い浮かべながら、試行錯誤を重ねています。

▲季節ごとに表情を変える、手描きのメニュー。あたたかい手仕事が、店の空気をやさしく包み込みます

▲店内に飾られている開店祝いの品々。人と人とのつながりが、この店の土台になっています
千葉や神奈川などの遠方から足を運んでくれる友人、「おいしかったです」と声をかけてくれる常連客。仕込みは朝から始まり、閉店は深夜になります。決して楽な毎日ではありません。それでも、「ありがとう」「また来ます」その一言で、疲れはすべて報われるといいます。
亀戸の日常に、寄り添う一軒
亀戸BULL’Sバルには、確かに人を受け入れる温度があります。仕事帰りに一杯だけ飲みたい夜。
誰かとゆっくり食事をしたい日。あるいは、特別な理由もなく、ただ外に出たくなったとき。
そんな何気ない日常の延長線上で、自然と選ばれる場所でありたい。亀戸BULL’Sバルには、そんな思いが込められています。

「また来たい」「次は誰かを連れて来よう」 そう思わせてくれるのは、料理の美味しさだけではありません。迎え入れてくれる人の距離感や、無理のない居心地の良さが、この店の魅力です。
亀戸という街で育ち、亀戸という街に店を構えたからこそ、この場所に集う人たちの日常に、そっと寄り添っていきたい。亀戸の夜に、もうひとつの「帰れる場所」が生まれました。

※2025年12月取材時の情報です。料金や営業時間などが変更になる場合がございます。詳細は必ず店舗にてご確認ください。
※記事中の金額は全て税込みの価格です。