restaurant_menu すし

鮨黒舟(スシクロフネ)

place扇橋一丁目バス停から徒歩1分

東京で出会った江戸前寿司。その魅力を一貫に込め

公開日:2026年6月30日

vol.2

※取材時点の料金、営業時間など変更している可能性があります。最新の情報はお店にお問い合わせください。

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住吉駅から少し歩いた住宅街。

通りから一本入ったマンションの1階に、「鮨黒舟」はあります。

 

普段は看板を出しておらず、営業の時間になると暖簾と看板を掲げるスタイル。

そのため、知らなければ寿司店があることに気づかず通り過ぎてしまうかもしれません。

 

店内に入ると、そこには4席だけのカウンターが広がっています。

 

この場所で寿司を握るのは、店主の伊藤翔太さん。

料理人としてさまざまな経験を積んだのち、江戸前寿司の世界に魅了された一人です。

 

江戸前寿司との出会い

伊藤さんの料理人としての原点は、故郷である三重県の懐石料理店でした。

その後は京都のフランス料理店へ。

 

当時は将来どんな店を持つのか、何の料理で独立するのかまでは決めていなかったそうです。

転機となったのは東京。

京都で勤めていたフランス料理店の銀座店へ研修に訪れたことがきっかけでした。

 

東京でさまざまな料理を食べ歩く中で出会ったのが、江戸前寿司です。

「地元で食べていた寿司とは全然違いました」

そう振り返る伊藤さん。

 

地方の寿司は新鮮な魚を味わうことが中心ですが、江戸前寿司には、魚にひと手間を加える文化があります。

煮る、締める、寝かせる。

素材をそのまま提供するのではなく、職人の仕事によって魚の魅力を引き出していく。

その考え方に強く惹かれたといいます。

 

鮨黒舟

▲丁寧な手仕事で仕込みを行う伊藤さん

 

コロナ禍で始まった黒舟

鮨黒舟がオープンしたのは2021年10月。

しかし、当時の営業形態は現在とはまったく異なっていました。

コロナ禍の真っ只中だったため、テイクアウト専門店としてスタートしたのです。

実は今あるカウンター席も当時はありませんでした。

 

「いつカウンター営業ができるようになるかわからなかったので」

限られたスペースの中で、まずはテイクアウト専門店として開業。

 

そして2023年7月、状況が落ち着いてきたことを受けて、以前から構想していた

カウンター営業をスタートしました。

現在の4席のカウンターは、そのタイミングで新たに設けたものだそうです。

 

店名の「黒舟」は、この地域に同じような寿司店が少なかったことから名付けられました。

「黒船が来た、みたいな感じですね」

そんなユーモアも込められています。

 

鮨黒舟

▲伊藤さん。取材中も終始丁寧にご対応いただきました

 

4席だからできること

店内はカウンター4席のみ。

貸し切り時には席を一つ増やし、5名まで利用できます。

 

料理を作るのも、接客をするのも、ドリンクを出すのも伊藤さん一人です。

 

一見すると大変そうですが、その分お客様との距離は近くなります。

とはいえ、コース料理を提供しながら会話をするのは簡単なことではありません。

次の料理の段取りを考えながら、お客様の様子に目を配り、ドリンクも用意する。

4席が満席になると、頭の中は常にフル回転です。

 

だからこそ、来ていただいたお客様に合わせた料理も考えることができます。

 

「先週3回来てくださったお客様がいたのですが、全部内容を変えました」

 

寿司だけでなく、一品料理も前回と重ならないよう工夫しているそう。

少人数の店だからこそできる、きめ細やかな心遣いです。

 

鮨黒舟

▲店内は4席だけ。ゆったりと食事を楽しめる空間です

 

ネタとシャリが一緒になる”握り

取材中、特に印象的だったのが握りについてのお話です。

 

伊藤さんはネタの切り方にも強いこだわりを持っています。

魚を必要以上に厚くしないのは理由があります。

 

「魚が厚いと、ネタとシャリがうまく混ざり合わず、

別々に食べているような感覚になってしまうんです」

 

寿司はネタとシャリが一体となって初めて完成する料理。

 

だから魚の厚みや大きさ、シャリとのバランスまで細かく考えながら握っているそうです。

実際に黒舟の握りは、ネタがシャリを包み込むような美しい形をしています。

 

口の中でほどけたときに、魚の旨味とシャリの味わいが自然と混ざり合う。

 

そこには、伊藤さんのこだわりが込められています。

 

鮨黒舟

▲カウンターに立つ伊藤さん。一貫一貫、丁寧に握っていきます

 

鮨黒舟

▲絶妙な力加減で形を整える伊藤さんの手元

 

鮨黒舟

▲仕上げの一貫をお客様のもとへ

 

鮨黒舟

▲ネタとシャリが一体となった握りの完成です

(コースで出る中トロの握り。季節によって産地が違います。)

 

日々変化するおまかせコース

黒舟はおまかせコースのみ。

何が出てくるのかは、その日のお楽しみです。

魚は季節によって変わり、調理法も日々移り変わります。

 

例えばマグロ。

3キロほどの塊で仕入れ、その日使う分だけを切り出していくため、

残った部分は日を重ねていきます。

 

使いながら寝かせていくため、結果として2週間ほど経つこともあるそうです。

「旨味が強くなって、身も柔らかくなります」

 

同じマグロでも、日を追うごとに味わいは少しずつ変化していく。

そんな変化を楽しめるのも、黒舟の面白さなのかもしれません。

寿司の合間に登場する一品料理も季節ごとに内容が変わります。

 

何が出てくるかわからない。

そんなワクワク感も、おまかせコースならではの魅力です。

 

鮨黒舟

▲イワシの磯辺巻き。ランチは前菜に握り10貫と巻き物、ディナーは一品料理5~6品に

握り12貫と巻き物。満足感たっぷりのコース内容です

 

鮨黒舟

▲おつまみの「子もちヤリイカ」。一品料理も季節によって内容が変わります

 

住吉の住宅街で味わう特別な時間

住宅街の一角にある4席だけの寿司店。

 

決して目立つ場所ではありません。

 

それでも暖簾をくぐれば、そこには店主が積み重ねてきた経験と技術、

そして江戸前寿司への想いがあります。

 

一貫一貫に込められた仕事を味わいながら、ゆっくりと流れる時間を楽しむ。

4席だけの小さな空間だからこそ味わえる“少し贅沢なひととき”。

 

そんな時間を過ごしたい日に訪れたくなる一軒です。

 

鮨黒舟

▲営業中にお店の前に置かれる看板。夜になるとやさしい灯りがともり、お客様を迎えます

 

 

【取材後記】

取材を通じて印象的だったのは、伊藤さんの職人としての姿勢です。

寿司はもちろん、一品料理についてお話を伺っていても、

「どうすればお客様に喜んでいただけるか」

を常に考えていることが伝わってきました。

 

4席だけのカウンターだからこそ味わえる距離感と、おまかせコースならではの楽しさ。

取材をしながら、ここで過ごす時間の豊かさを想像してしまいました。

 

そして、もう一つ目を引いたのが伊藤さんの仕事道具である包丁です。

実は私自身、木材が好きなのですが、包丁の柄を見た瞬間に思わず目が留まりました。

「この柄に使われている木って、もしかして……」

そうお聞きすると、

「木に詳しいのですか?これはスネークウッドです」

と教えてくださいました。

 

スネークウッドは、その名の通り蛇の模様を思わせる独特の木目が特徴の木材です。

美しい木目と深みのある色合いは、思わず見入ってしまうほどでした。

 

黒舟を訪れた際は、目の前で繰り広げられる伊藤さんの包丁さばきはもちろん、こだわりの仕事道具にもぜひ注目してみてください。

 

そしてもう一つ。

お店の入口に置かれた、かわいらしい傘立てにもご注目を。

 

鮨黒舟

▲伊藤さん愛用の包丁。写真奥の包丁の柄には、スネークウッドが使われています

 

鮨黒舟

▲入口に置かれている傘立て。かわいらしいフクロウに注目してください

 


※2026年6月取材時の情報です。料金や営業時間などが変更になる場合がございます。詳細は必ず店舗にてご確認ください。

※記事中の金額は全て税込みの価格です。

 

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